田舎で子育てをしていると、「自然に囲まれてのびのび育つ」「人が優しい」といったメリットをよく聞きます。それはたしかにそのとおりだと、8年住んだ今でも思います。
ただ、実際に子育てをしてみて初めてわかった「不便」や「ギャップ」もありました。今回は、そんな田舎暮らしのリアルな子育て事情を、実体験ベースでまとめてみました。
田舎暮らしでの子育てのメリットはよく語られますが、「実際どうなの?」と思っている方の参考になれば嬉しいです。
1. 病院が遠い
田舎で子育てをしていて実感するのが、「病院が遠い」ということの大変さです。
我が家の場合、小児科や皮膚科といった子どもがよくお世話になる診療科が、どれも車で30分ほどかかる距離にあります。子どもが小さいうちはちょっとした風邪や湿疹でも診てもらいたいことが多く、そのたびに往復1時間以上+待ち時間+診察+薬局というフルコースになります。
時には2つの病院をハシゴすることもあり、そうなると午前中がまるまる潰れてしまうことも。
近くに病院がないわけではないのですが、信頼できる先生や専門の診療科を求めると、どうしても選択肢が限られ、車で遠くまで通うことになります。
田舎で子育てをする上で、「医療アクセス」は見落としがちな盲点かもしれません。

2. 子どもが少ない
我が家の地域では、1学年あたりの児童数が15〜20人程度。都会と比べると、想像以上に子どもが少ないと感じました。
もちろん、一人ひとりに先生の目が行き届くという点では安心です。ただし、人間関係が狭いがゆえの息苦しさを感じる場面もあります。たとえば、保育園から中学校までほぼ同じメンバーで過ごすことになるため、万が一いじめなどが起こると「逃げ場がない」というリスクも。
また、生徒数が少ないことで、部活動や習い事の選択肢も限られます。団体競技ができない、教員の配置が足りないといった声もあり、教育水準に不安を感じることもあります。
将来的に学校統合の話も出ていますが、そうなると今度は通学距離が伸びるという別の問題が出てきます。

3. すべての行動が「親同伴」になる
田舎では、子どもが小学生になっても「子どもだけで行動する」ことが難しいのが現実です。
徒歩圏内にお店や遊び場がないため、友達の家に遊びに行く、駄菓子屋さんで買い物をする、というようなことも基本的には親の送迎が必要になります。
また、山間部では坂道が多く、野生動物も出るため、子どもだけの徒歩移動や自転車移動は現実的ではありません。
小学校までは親の送り迎えが当たり前。
すべての行動が「親ありき」になり、子どもの自立や冒険の機会が限られてしまうというジレンマもあります。
子どもに自由な時間や小さな冒険をさせてあげたいと思っていても、田舎では物理的な制約がつきまとうのは、移住して初めて気がついたデメリットです。
4. 習いごとの選択肢が少ない
地方でももちろん習いごとはあります。書道、英語、ピアノ、スイミング、サッカーなど、一通りのジャンルはそろっています。
ただし、それぞれの教室が点在しているため送迎が大変で、兄弟がいると調整にもひと苦労。
また、人口が少ないために競合がなく、教室の質を比較・選択しづらいという課題もあります。都会のように「この先生は評判がいいから」などと選ぶことが難しく、通える範囲にあるものから選ぶしかないのが実情です。
塾も近くにないため、受験や学習強化を視野に入れると、市街地までの遠距離通学が必要になります。
たまに都会の親戚の話を聞くと、ドラム、空手、バレエ、日本舞踊など多種多様な習いごとに通っていて、「選べること自体が贅沢だな」と感じることもあります。
5. 雨の日に遊べる場所がない
小さな子どもはとにかく体を動かしたいものですよね。でも、田舎では雨の日になると遊び場の選択肢が極端に少なくなるのが現実です。
近くにあるのは基本的に屋外の公園や広場ばかり。モールや屋内の遊び施設は車で30分以上かかるうえ、数が少ないため人が集中します。
しかも、高規格な室内遊具などは観光客向けの価格設定になっていることが多く、地元の子育て世代が日常的に使うには少しハードルが高い。

その結果、雨の日はどうしても家にこもりがち。
家の中での遊びの工夫が求められますが、親も子どももストレスがたまりやすいと感じています。
「自然があるだけ」では乗り越えられない現実もある
田舎暮らしには、たしかに美しい自然や静けさ、ゆったりとした時間があります。しかし、実際に子育てをしてみると、その自然が時に“制約”にもなることを痛感します。
「田舎=のびのび育つ」
そんなイメージだけで飛び込むと、思わぬギャップに戸惑うことになるかもしれません。
だからこそ、これから田舎で子育てを考えている方には、メリットだけでなく、現実的な「不便」も知った上で選んでほしいと思っています。
それでも私は、田舎で子育てをしてよかったと思っています。ただし、それは家族で話し合い、暮らしを工夫しながら乗り越えてきた結果であることも、忘れてはいけないと感じています。
